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非主流のしびれる巻き返し、私たちの中に「朴恒緒」はいないのか

非主流のしびれる巻き返し、私たちの中に「朴恒緒」はいないのか

Posted December. 17, 2018 08:27,   

Updated December. 17, 2018 08:27

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今のベトナムは大フィバーそのものだと言う。ベトナムのホーチミンに住んでいる後輩は、電話で「都市機能が麻痺したようだ」と伝えた。朴恒緒(パク・ハンソ)監督率いるサッカー・ベトナム代表が10年ぶりにスズキカップ優勝を決めた直後、街は繰り出したサポーターズとバイクに占領された。

市民たちは交通渋滞で16日の午前0時が過ぎて家に帰れたという。街は夜通しで歓喜に沸いた。ベトナムのメディアは、「全国民が眠れなかった」と報じた。

ベトナム戦を見ながら悩まないわけにはいかなかった。ある意味、ボール遊びの一つに過ぎないサッカーだ。その中に、一体何があって、国中を沸かすエネルギーが生まれるのだろうか。

進化生態的な見解によると、サッカーは原始の本性につながっているという。両足で走るようになった人間がチームを組んで目標(Goal)の獲物を捕らえること。その原始的な猟を現代的な競技に具現したのがサッカーだと言う。だからこそ誰もがサッカーを本能的に理解することができるのだ。サッカーが文化圏を問わず、どこでも歓迎される所以だ。

サッカー競技が行われると社会が狂的に一変するのも同じ脈絡だ。猟の成敗は、集団のサバイバルがかかる問題だった。そのため、共同体は猟を行う前に祭りを開き、全構成員が大声で漁師にエネルギーを吹き込む。そして漁師たちの収穫を歓呼で迎える。現代に人々がサッカーを応援するのも、我々の遺伝子の中に組み込まれているサバイバル本能とつながっているのだ。

ベトナム国民は今回、サッカーでの達成感を通じて自分たちの未来を楽観するようになったのだろう。特にスズキカップのエネルギーが大きかったのは、タイという存在があったからだ。ベトナムはタイをライバルと考えている。私たちが日本を見るような、そういう関係だ。経済的にはタイがより豊かで流行も早い。サッカーももっとうまい。タイはスズキカップ最多優勝国だったし、今大会で3連覇を目指していた。だからこそ、今回ベトナムがタイを抑えて優勝を決めると、その自信が急速に広がったのだ。

ところが大韓民国までベトナムのサッカーに熱狂するのはなぜか。今回のスズキカップ決勝の視聴率は20%近く出た。圧倒的な数値だった。同大会の存在を知っていた国民はどれほどいただろうか。予想外の数値だ。もちろん、朴恒緒監督の活躍のためだ。ならば、朴監督の何が韓国国民の心を動かしたのだろうか。

スポーツ社会科学者たちは、おおむね似たような見解を示している。朴氏は、韓国社会の主流から外れた人だ。国内では仕事がなかったため、世界サッカーの辺境地ベトナムで辛うじて仕事に就いた。だからと言って、元々目立った実績があったわけでもない。バックグラウンドが良いわけでもない。朴氏は、この頃の暗い韓国の庶民の自画像である。韓国国民は、自らを朴氏と同一視した。

その朴氏が奇跡のような能力を発揮した。朴氏の偉業を見て勇気をもらったのだ。自ずと拍手を送った。もちろん今回の結果を出すまで、朴氏の公正で温かいリーダーシップも少なくない影響を与えた。不公正で非情過ぎる社会への反発だった。成功した映画は、大方こういう筋書きとなっている。ところがスポーツに脚本はない。映画よりも現実的だ。

朴氏の成果に心から拍手を送る。同時に韓国社会の欠乏を見る。朴監督がベトナム国民に与えた希望、それは我々も必要とするものだ。ベトナムの試合を見て歓呼しながらも、苦い後味が残るをのを感じる理由だ。


touch@donga.com