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トラブルメーカーの孫悟空を謝罪させるためには…

トラブルメーカーの孫悟空を謝罪させるためには…

Posted July. 24, 2018 09:09,   

Updated July. 24, 2018 09:09

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小学2年生の体育時間に、学校の運動場で走って病院の緊急治療室に運ばれたことがある。腕白な子で「孫悟空」と呼ばれた男子児童の友達が私の足をひっかけた。体が宙に浮いて転げ落ちたが、地面から起き上がることができなかった。病院で医師は、完全に折れてずれた鎖骨が映ったX線を見せた。両肩にメビウスの帯(∞)状の厚いギブスをしてからようやく家に帰ることができた。

その夜、家の呼び鈴が鳴った。母が出てみると、孫悟空と彼の母親が立っていた。孫悟空は既に相当叱られたように眉毛が肩まで垂れていた。孫悟空の母親は、「ほんとうに申し訳ない」とどぎまぎしていた。「お母さんが孫悟空をこっぴどく叱るだろう」と期待していたが、母は、「きみも相当驚いたでしょう。またこんなことをしちゃだめだよ」としか言わず、がっかりしたことを思い出す。孫悟空の母は、どっしりとしたガラス瓶に入れられたファミリージュースを置いて去った。

孫悟空がその時、小学生だったのが本当に幸いだ。今は心からの謝罪とジュースボトル1本で事は済まないからだ。2004年に公布された「学校暴力予防及び対策に関する法律」は、児童生徒の身体・精神・財産上の被害を引き起こした包括的行為を学校暴力とみて、このようなトラブルを必ず学校暴力対策自治委員会(学暴委)を通じて処理するようにしている。

学暴委は5~10人で構成するが、このうち過半数は保護者委員が、残りは教頭や教師、弁護士、警察官、医師などで構成するようになっている。マニュアルによると、学暴が疑われる状況は、必ず校長を経て学暴委に通報しなれなければならない。この時、教師にとって重要なのは、しつけではなく通報であり、「法的にすっきり」処理することである。もしすぐに通報せず、双方の子供を呼んで対話でも試みて問題にでもなれば、教育庁の監査などで叱責されることを覚悟しなければならない。

学暴委は双方の主張を聞いて是非を決定する。学暴で結論づけられた事案は、無条件先導(懲戒)措置が下される。措置は、「被害生徒に対する書面での謝罪」から「退学」に至るまで9段階に分けられる。このような事実は、児童生徒の学校生活記録簿に記録される。

多くの場合、学暴において被害児童生徒が希望するのは、加害児童生徒の心からの謝罪と反省、再犯しないという約束と実行である。しかし、厳罰主義の学暴法の体制で加害者はふてぶてしくなることが多い。

被害者の両親の立場から見れば、とんでもないことだ。加害児童生徒とその親が「私たちも間違っていたが、そちらも問題だ」というふうに出るからだ。弁護士を伴って来る加害者の親もいる。訴訟戦にもつながる。問題が本末転倒となり、大人同士の戦いに拡大される。加害児童生徒への啓発や被害児童生徒の治療は後回しにされる。この過程を見守る同じクラスの子供たちは皆傷つけられる。しかしそこまで気にする人は誰もいない。

最近メディアを騒がせる昨今の児童生徒の悪質な学暴事件を見れば、学暴法はもとより、刑法で厳しく処罰してもすっきりしない気がする。しかし、同じように学校暴力と呼ばれる相当の事件の多くは、厳罰より対話と指導、教師の綿密な関心と友人たちの支持を必要とするのも事実である。それでも今日の学校は、ミシェル・フーコーが著書「監視と処罰」で主張した言葉通り、刑務所の姿に似ている。裁判と処罰、烙印と監視があるだけで、お互いの傷に共感し、許しを求め、それを通じて成長する過程がない。時には心からの謝罪とファミリージュースがあった昔の学校のほうが、むしろ懐かしい理由である。


林雨宣 imsun@donga.com