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「W杯は未だに怖い」 孫興民の涙は4年が経っても止まらなかった

「W杯は未だに怖い」 孫興民の涙は4年が経っても止まらなかった

Posted June. 25, 2018 09:40,   

Updated June. 25, 2018 09:40

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「自分より若い選手もいるのだから泣いちゃ駄目だと思った。これからは自分が慰めてあげなければならない立場なので…。ワールドカップは、未だに怖い」

「美しく、止められないゴール」を決めながらも号泣した。24日、ロシアのロストフ・ナ・ドヌに位置するロストフ・アリーナで行われたロシア・ワールドカップ(W杯)のグループリーグF組の第2戦メキシコ戦が終わった後、ピッチを去る孫興民(ソン・フンミン)の目は腫れていた。

後半43分、0-2でリードされている状況で、孫興民が放った会心のミドルシュートはゴールを大きく外した。罪悪感に押しつぶされそうになった顔は歪められ、口元には自身を咎める暴言が飛び出した。

5分後の後半48分(ロスタイム3分)。味方のパスを受けてメキシコ陣英の右側をドリブルで突破した孫興民は、左足で強力なミドルシュートを放った。対角線上に約22メートルを砲弾ように飛んだボールは、メキシコのゴール左上の隅に吸い込まれネットに突き刺さった。今大会で「蜘蛛の手」と呼ばれるGKの一人として名を馳せていたメキシコGKオチョアが飛び上がったが、隅を突く高速弾を止めることはできなかった。米紙ニューヨークタイムズは、このゴールを「サンダーボルト」と伝えた。

いわゆる「孫興民ゾーン」と呼ばれるエリアで生まれたファンタスティックなゴールだった。孫興民は、子供のときから父と一緒にゴール左右の45度当たりで毎日200回以上のシュート練習を繰り返しながら感覚を磨いた。国際さんー連盟(FIFA)テレビの解説者は、「実に美しく、止められない一撃だった。決定力不足に苦しんでいた韓国の解決師は孫興民だった」とコメントした。

メキシコ戦で韓国は1-2で敗れたが、エースの孫興民は自分の仕事を全うした。終始熱狂的な応援を送った3万人あまりのメキシコのサポーターたちも孫興民の見事なゴールが決まる瞬間は沈黙した。試合終了後、メキシコのサポーターは、両手の指で2対1を作ってメキシコの勝利をアピールしながらも、「ソン!ファンタスティック」と孫興民のプレーを褒めた。

孫興民は、この日最前線のFWとして出場し縦横無尽に走り回った。韓国選手の中では最多の9本のシュート(韓国代表全体で17本)を放った。ボールが中盤から前線に届けられないときは、ハーフラインまで下がって攻守の連携役を買った。英国のBBCは、「韓国チームでは、唯一孫興民だけが輝いた」とコメントした。


敗北を知らせる試合終了のホイッスルが鳴ると、何人かの完全燃焼した韓国選手はグラウンドに仰向けに倒れた。孫興民は座り込んだ一部の選手を起こして競技場を抜け出した。そういう姿を見てきた主将の奇誠庸(キ・ソンヨン)は、「自分が代表チームを去れば、主将腕章は孫興民がつけるべきだ」と言った。同僚たちの前で毅然としていたが、グラウンドを後にするときは零れ落ちる涙をこらえ切れなかった。

「選手たちは本当にグラウンドでベストを尽くしたことだけは分かってもらいたいし…、あまりにも沢山応援して頂いたことに感謝しています」

試合終了後に感想を語りながら涙ぐんでいた声は、ドレッシングルームに入ってからは号泣に変わった。ロシアを訪問している文在寅(ムン・ジェイン)大統領が他の選手たちを慰めながら近づいたときは、一言も言えないままただ泣いてばかりだった。そして、顔をうずめるように腰を下げては声を出して泣いた。文大統領が、「良くやった。良くやった。良くやったよ」と叩きながら慰めるときも、孫興民はタオルで顔を隠したまま泣き止まなかった。

2014年のブラジルW杯でグループリーグ敗退を喫した後も大粒の涙を流し「泣き虫」の異名を得たが、「今度のW杯では自分も笑って、国民も笑えるようにしてみせる」と意気込んでいた。

またもや世界の高い壁を実感した孫興民は、「本当に良く準備しても足りないのがW杯だ。未だに(W杯の舞台が)怖い。まだ経験が沢山足りないことを感じる。もっと徹底的に準備しなければならない」と語った。

2敗を喫した韓国だが、この日ドイツがスウェーデンに2-1で勝利したお陰で、グループリーグ突破への一縷の希望をつないだ。ドイツは孫興民にとっては特別だ。イングランド・プレミアリーグ(EPL)に進出する前に、成長の足場となったのがドイツのブンデスリーガだからだ。16歳だった2008年に大韓サッカー協会の支援を受けてサッカー留学のためにドイツに渡った孫興民は、ハンブルガー(2010~2013年)とレバークーゼン(2013~2015年、以上1軍基準)でプレーした。孫興民は、「最後まで戦わなければならない」;という言葉を3度も繰り返しながら、ドイツ戦で後退りするプレーはしない決意を示した。「もう言葉は要らないと思います。良いか悪いかは別として、本当に死に物狂いで戦わなければなりません」。

鄭允喆 trigger@donga.com