Go to contents

平昌のビクトル・アン

Posted December. 08, 2017 09:07,   

Updated December. 08, 2017 10:24

한국어

フランス漫画の主人公であるアステリックスは力が強くなる「魔法の水薬」を飲んで、ローマの兵士たちをやっつける。北欧のバイキングは、ベニテングタケで作った薬を飲んで、非常に興奮した状態で敵に刀を振り回したという。第二次世界大戦でドイツは兵士たちに、コーヒーとチョコレートを混ぜて作った「ショカコーラ」というカフェインの塊を配って戦場に送り出した。最近で言えば、すべてドーピング(薬物による体力や集中力増強)であるわけだ。

◆「体で戦う戦争」が消えたことで、ドーピングはスポーツの領域になった。実はスポーツドーピングの歴史も戦争に劣らぬほど長い。ギリシャの古代オリンピック選手たちは、羊の睾丸を食べて試合に出た。動物の睾丸から筋肉増強剤であるステロイド成分を抽出することができるので、根拠のない処方ではない。戦車競走に先立って、ハーブティーを飲んだとも言われている。覚せい剤の成分である可能性がある。

◆ドーピングは、選手たちには致命的な誘惑である。米医学者ボブ・ゴールドマンが書いた「ロッカールームでの死(1984年)」という本には、「ゴールドマンのジレンマ」が出てくる。運動選手たちに、「検査に引っ掛からなくて、成績を保証してくれる薬があるなら、副作用で5年後に死亡しても服用するか」というアンケートを行ったところ、回答者の半分が「薬を飲む」と答えたという。2011~2015年に組織的にドーピング結果を操作して、5日(現地時間)、国際オリンピック委員会(IOC)から平昌(ピョンチャン)五輪への出場禁止処分を受けたロシアは、国がドーピング誘惑に負けたケースである。

◆冬のスポーツの強国ロシアのドーピングスキャンダルは、ややもすると平昌冬季五輪の興行に冷水を差すところだった。しかし、ロシアのプーチン大統領が「(薬物検査に合格した)選手たちは、個人資格で参加する」と明らかにし、最悪の事態は免れた。本人の選択は残っているが、フィギュアスケートで「第2の金姸兒(キム・ヨンア)」と呼ばれるメドヴェーディーヴァのようなロシアのスターたちを平昌で見る可能性が高まった。「諦められない舞台だ。4年間を準備してきた」と、ロシアの出場禁止にも個人資格で参加意志を燃やしてきた韓国出身のショートトラックスケート選手ビクトル・アン(安賢洙)。彼を平昌で再び見られることになった。