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ノーベル文学賞受賞のカズオ・イシグロさん、最新作は歌詞

ノーベル文学賞受賞のカズオ・イシグロさん、最新作は歌詞

Posted October. 23, 2017 08:44,   

Updated October. 23, 2017 08:59

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20日、英国の作家カズオ・イシグロさん(53)の「新作」が発売された。

ノーベル文学賞受賞者と呼ばれてわずか半月。最新作は意外にも歌詞だ。20日に発表された世界的ジャズシンガー、ステイシー・ケントさん(52)の最新アルバム「I Know I Dream」に収録された「Bullet Train」という曲だ。

イシグロさんは10年前からケントさんに歌詞を提供してきた。今回の歌は10曲目の作品。ノーベル賞受賞者を専属の作詞家とする歌手の気持ちはどうだろうか。ロンドンにいるイシグロさんの長年の友人、ケントさんに18日、国際電話でインタビューした。

ケントさんは「一時、音楽家を志望した『イシ』(イシグロさんの愛称)に会うなら、彼が自分の演奏を謙遜しても、絶対に信じてはいけない」と話した。「ギターが実に上手です。音楽を完全に理解する作詞家です」

イシグロさんの新曲の歌詞は、超現実的な短編小説のようだ。弾丸のように走る東京―名古屋間の新幹線の中で、過去、現在、未来が入り乱れる経験をする人を描く。「聴く人は、曖昧な時間の中に投げ出されます。はやく過ぎ去る時間の隠喩が汽車です」。ケントさんは「イシは、こちらとあちら、現実と夢を行き来する歌詞に驚くほど感性的なドラマを配置しました。消えていく愛と若さを受け入れ、前進していかなければならないというメッセージが、映画のようなディテールの中に非常に節制された言語と隠喩で描写されています」と説明した。

ケントさんも文学を専攻した。小説を書くことも勉強した。イシグロさんの歌詞にリズムをのせるジム・トムリンソンさんは、ケントさんの夫であり、哲学を学んだ音楽家だ。ケントさんとイシグロさんは、互いが互いのファンとして初めて会った。「イシがBBCラジオに出演して、無人島に持っていきたいアルバムに私のアルバムを挙げました。『ありがとう。私もあなたのファンだ』と伝え、ランチの約束をしました」。

2006年のある日の食事は、3人の人生を変えた。「イシは日本で生まれて英国で育ち、私は米国出身だが、欧州で主に活動しています。互いを『流浪者』と考え、留まることのできない人間のストーリーを歌に投影することにしました」。

食事の2週間後、ケントさんの自宅のポストに郵便が届く。イシグロさんが書いた2編の歌詞だ。イシグロさんが1995年の小説『充たされざる者』から素材を取った「Breakfast on the Morning Tram」と「The Ice Hotel」。これらの曲を収録したアルバム「Breakfast on the Morning Tram」は、グラミー賞候補になった。

イシグロさんは2015年、あるインタビューで、「作詞から学んだことが小説を書くことに多くの影響を与えた」と語った。行間に多くのことを盛り込む方法を学んだということだ。イシグロさんの作品の大半を読破したというケントさんは、『充たされざる者』を最高作に挙げた。

ケントさんは、「流浪者であるイシと私は、歌でメランコリーを語りながらも、希望のための小さな窓を開けています」と話した。電話を切ってアルバムを聴いた。イシグロさんとケントさんの歌は、しみ込み、照らし、吹き込んできた。



イム・ヒユン記者 imi@donga.com