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二つの障壁

Posted October. 21, 2017 07:46,   

Updated October. 21, 2017 08:10

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米国の作家ドン・ウィンズロウの「犬の力」は、メキシコを中心に米南部とコロンビアに至るまでの麻薬組織の黒い取引を暴いた興味深い本だ。タイトルは、「私の命を刀から救われ、私の唯一のことを犬の力から求めなされ」という聖書の詩篇の句から取ってきた。映画「ブレードランナー2049」の監督・ドニ・ヴィルヌーヴの前作「シカリオ(殺し屋)」も、そのモチーフは「犬の力」と似ている。麻薬密輸と彼を取り巻く請負殺人を題材に、米国とメキシコの国境の荒れ果てて殺伐としたイメージをリアルに見せてくれる。

◆その国境にドナルド・トランプ米大統領が公約として設置を約束した障壁の試作品が、18日発表された。カリフォルニア州サンディエゴ南の国境に、コンクリートと鉄筋材質で造られた試作品8つの高さは5.5~9.1メートルに上る。これほどのサイズの試作品が延々と3000キロに及ぶ国境地帯に建てられることになれば、それこそ現代版の「万里の長城」になるだろう。

◆障壁は元々外国の侵略を食い止めるために作った。古代ローマのハドリアヌスの壁は、「野蛮族」の侵入を防ぐために作り、古代中国の万里の長城は「野蛮人」の侵入を食い止めるために作った。野蛮族かどうか、野蛮人かどうかの基準は、その障壁のどちらかに住むかによって決まった。トランプは、メキシコを通じた米国への密入国が経済的には外国侵略と呼べるほどのレベルに達したと見ているようだ。実はゲルマン人の移動や匈奴族の南下も、軍事的侵略あると同時に、経済的移住だった。

◆北米自由貿易協定(NAFTA)を採用していた米国とメキシコの両国が、NAFTAを廃棄し、障壁を立てると主張しているから隔世の感である。しかし、目をむけば、世界で最も強固な障壁は、韓半島を南北に分ける柵と地雷地帯だ。ここは、ドイツのベルリン壁の崩壊後も残っている唯一の鉄のカーテンである。11月のトランプの訪韓時に休戦ラインを訪問するかどうかを巡ってうわさが飛び交っている。ある障壁すら崩せないまま、心の障壁をさらに高く積み上げているのが私たちの現実である。どれほど長い道のりをさらにさまよってこそ、人たちは障壁を崩すことができるだろうか。

宋平仁(ソン・ピョンイン)論説委員